皆さんが高校で教わった世界史や日本史が、日本特有のものだということを知っていますか。日本人が当たり前だと思っている過去の「事実」が、外国ではしばしば当たり前ではありません。なぜこのようなことが起こるのでしょう。このテーマ講義ではまず、日本における歴史の研究や教育がいつ頃からどのような背景のもとで成立したのか、そこにどのような問題があるのかを説明します。
その後、とりわけアジアにおける多様な歴史観や歴史叙述を、外国人ゲストも交えた専門家が具体的に解説します。歴史学とは何かを考え、アジアの人々が持つ様々な歴史観を知れば、皆さんは現代日本における世界史叙述が唯一絶対ではないことが分かるはずです。これをふまえて最後に、これからの世界史はどう書かれるべきかについて、みんなで討論してみるつもりです。ぜひ積極的に講義に参加して下さい。
羽田 正(はねだ・まさし)
東京大学東洋文化研究所教授。専門は比較歴史学。主な著書に『イスラーム世界の創造』(東京大学出版会)、『シャルダン「イスファハーン誌」研究』(編著、東京大学出版会)などがある。本講義の関連論文としては「「有用な歴史学」と世界史」(『UP』400)が挙げられる。
吉澤 誠一郎(よしざわ・せいいちろう)
東京大学大学院人文社会系研究科助教授。専門は近代中国都市史。著書に『天津の近代―清末都市における政治文化と社会統合』(名古屋大学出版会)、『愛国主義の創成―ナショナリズムから近代中国をみる』(岩波書店)がある。
三谷 博(みたに・ひろし)
東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は19世紀日本の政治社会・国際関係史。主な著書に『明治維新とナショナリズム』(山川出版社)、『ペリー来航』(吉川弘文館)、『明治維新を考える』(有志舎)、『東アジアの公論形成』(編著、東京大学出版会)がある。
Jayeeta Sharma
カーネギー・メロン大学助教授。専門はイギリス植民地期のインド史。著書に Empire’s Garden: Assam and the Making of India, Permanent Black and Duke University Press, Forthcomingがある。
Mansur Sefatgol
テヘラン大学助教授/東京外国語大学AA研客員教授。専門はイラン史。主な論文に "Majmu'ah'ha: Important and Unknown Sources of Historiography of Iran during the Last Safavids," N. Kondo ed. Persian Documents, London & New Yorkがある。
白石 さや(しらいし・さや)
東京大学大学院教育学研究科教授。専門は東南アジアを主要なフィールドとする教育人類学。近年はポップカルチャーのグローバル化も研究。主な著書に Young Heroes : The Indonesian Family in Politics, Ithaca、『増補 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行』(共訳、NTT出版)がある。
Rudolf Mrazek
ミシガン大学教授。専門は東南アジア近・現代史。主な著書に Engineers of Happy Land: Technology and Nationalism in a Colony, Princeton、Sujahrir: Politics and Exile in Indonesia, Ithaca がある。
Philip Yampolsky
ジャカルタ・フォード財団。専門は東南アジアを主要なフィールドとする民族音楽学。Music of Indonesia(Audio CD 20枚), Smithsonian Folkways Series の全録音監修解説で知られる。民族音楽の収集、解説、評論の他に、"Can the Traditional Arts Survive, and Should They ?," Indonesia, 71などの論文がある。