EALAI:東京大学/東アジア・リベラルアーツ・イニシアティブ | EALAI・UTCP共催 冬学期テーマ講義 | 共生のレッスン 東アジアの磁場から

金曜2限(10:40~12:10)
教室:1108教室
対象クラス:1年 文科 理科/2年 文科 理科
東京大学 東アジア・リベラルアーツ・イニシアティブ

講義内容紹介

共生のレッスン 東アジアの磁場から


講義概要

東京大学EALAI(東アジア・リベラルアーツ・イニシアティブ)とUTCP(共生のための国際哲学研究センター)が共催で行うオムニバス講義。

わたしたちの存在は常に他者とともにある。他者とは自分と異なる一切の存在であるだろうし、またときにはわたし自身の中に棲まうもう一人のわたしであるかもしれない。そもそも他者がわたしとは二律背反の全き異者であり、他者もまた、それぞれが一義的に何らかのレッテルを貼られるべき安定した存在であるという保証はどこにもない。そして、「わたし」と「他者」をともに全き何者かであると決めてかかること自体が実は暴力的に他者を待遇することなのではないか。

わたしたちは、いかなる意味においても他者と「共に生き」ている。そうであるならば、他者の存在と尊厳に最大限の敬意を払い、その関係性を正しさにおいて遇していくために、わたしたちは何を考え、どう振る舞えばいいだろうか。わたしたちが生きるこの東アジアというトポスを磁場として、共に生きるとはどういうことなのかを考えたい。それは、わたしたちがよりよく生きるためのレッスンでもある。


開講時限/教室

金曜2限(10:40~12:10)/1108教室


リンク


*履修希望者はUTask-Webにて詳細を確認の上、登録してください。

2012.10.12(金)ガイダンス

第1回目の講義では、ガイダンスとして、この講義を主催しているEALAI・UTCPの紹介、講師、講義内容の紹介が行われました。成績については、テーマ講義は「合否」のみで評価します。毎回授業の最後にリアクションペーパー(コメント、質問などを書く)の提出を課します。

2012.10.19(金)自然と規範性(1)~母乳育児は自然か?
講師:梶谷真司(本学准教授)

【講師紹介】
梶谷真司
東京大学准教授。UTCPメンバー。専門は、哲学(特に現象学)、比較文化、医学史(特に江戸から明治にかけての近代化)。社会の中で、また個々人において、物事に関する知の多層的・多元的構造に着目し、異なる種類・位相のものがどのように連関・共存しているかを考察している。

【講義内容】(第2回~第4回)
「自然」というのは、動物や植物のような対象領域ではなく、一種の規範性を帯びている。ではそれはどのような意味での規範なのか。それをこの講義では母乳、死、自然との関わりといった様々な観点から考察・議論する。

2012.10.26(金)自然と規範性(2)~自然な死とは何か?
講師:梶谷真司(本学准教授)
2012.11.02(金)自然と規範性(3)~自然との自然な関わりは可能か?
講師:梶谷真司(本学准教授)
2012.11.09(金)共生のプラクシス(1)-科学と宗教
講師:中島隆博(本学准教授)

【講師紹介】
中島隆博
東京大学准教授。UTCPメンバー。東京大学法学部卒業、東京大学大学院人文科学研究科中国哲学専攻博士課程中途退学。中国哲学研究者。中国哲学の脱構築、共生のプラクシスを主要研究テーマとして取り組む。主な著書に『悪の哲学―中国哲学の想像力』(筑摩選書)、『共生のプラクシス―国家と宗教』(東京大学出版会)、『哲学 (ヒューマニティーズ)』(岩波書店)、『「荘子」―鶏となって時を告げよ』(岩波書店、『残響の中国哲学―言語と政治』(東京大学出版会)、『Practicing Philosophy between China and Japan』(UTCP)、『解構与重建-中国哲学的可能性』(UTCP)、『The Chinese Turn in Philosophy』(UTCP)など。

【講義内容】
共生のプラクシス(1)-科学と宗教
ポスト・フクシマにおいて、近代東アジアの科学と宗教に関する議論を再考する。

2012.11.16(金)共生のプラクシス(2)-中国と女性
講師:中島隆博(本学准教授)

【講義内容】
共生のプラクシス(2)-中国と女性
魯迅の文学作品と映画『子どもたちの王様』(陳凱歌監督)を題材に、近代中国における女性像を考察する。

2012.11.20(火)共生のための障害の哲学(1)
講師:石原孝二(本学准教授)
ゲスト:荒井裕樹氏(日本学術振興会) ※火曜日ですが金曜日の授業に振替となっております

【講師紹介】
石原孝二
東京大学准教授。UTCPメンバー。東京大学大学院人文社会系研究科博士後期課程修了。科学技術哲学、科学技術倫理学、現象学を専門とする。最近では、精神医学の哲学や当事者研究に関する研究を進めている。著訳書:ショーン・ギャラガー、ダン・ザハヴィ『現象学的な心:心の哲学と認知科学入門』石原孝二、宮原克典、池田喬、朴嵩哲訳、勁草書房、2011年、石原孝二・河野哲也編『科学技術倫理学の展開』、玉川大学出版会、2009年、岩波講座『哲学』第五巻、岩波書店(分担執筆:第5章「心・脳・機械」担当)、2008年など。

【ゲスト紹介】
荒井裕樹
日本学術振興会特別研究員(PD)。東京大学人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。専門は日本近現代文学および障害者文化論。単著『障害と文学――「しののめ」から「青い芝の会」へ』(現代書館)、『隔離の文学――ハンセン病療養所の自己表現史』(書肆アルス)、共著『手招くフリーク――表現と文化の障害学』(生活書院、倉本智明編)

【講義内容】
障害と自己表現
「障害」を持つ人たちが、文学や美術などを通じて自己表現することの意味について考える。とくに精神障害を持った人々の自己表現について、単に「治療」や「リハビリ」といった医療的な観点からだけ捉えるのではなく、より社会的・文化的な観点からその役割について考える。(荒井裕樹)

2012.12.07(金)共生のための障害の哲学(2)
講師:石原孝二(本学准教授)
ゲスト:稲原美苗氏(UTCP上廣共生哲学寄付研究部門)

【ゲスト紹介】
稲原美苗
UTCP上廣特任研究員。未熟児として生まれ、保育器の低酸素状態が原因で軽度の脳性マヒ(アテトーゼ型)になる。オーストラリア国立ニューカッスル大学文学部社会学科を卒業後、同大学大学院に進学、honours degreeを取得。その後、渡英し、英国国立ハル大学大学院哲学研究科博士課程(Ph.D)修了。専門は身体論、フェミニスト理論、現象学、障害の哲学。主な著書に、『Abject Love:Undoing the Boundaries of Physical Disability』 VDM-Verlag (2009年:ドイツ)、「This Body Which is Not One:The Body, Femininity and Disability」 Body & Society Vol.15, No.1, pp.47~pp.62, SAGE(2009年:イギリス)等がある。

【講義内容】
私たちにとって痛みとは何であろうか。私たちが日常的に経験する「痛み」には様々なものがある。痛みを感じるとき、私たちはどのような状態におかれているのか。また「痛み」とは、自分だけが感じることのできる主観的な感覚なのか、それとも何らかの科学によって数値化でき、すべての人が共有できる客観的な感覚なのか。この授業では、痛みをもっぱら患者の主観的な感覚として扱うことによって、医学が扱う客観的な感覚である「痛み」とは異なる視点、つまり痛みを実際に抱える「当事者」の側から痛みを捉えていく。(稲原美苗)

2012.12.14(金)共生のための障害の哲学(3)
講師:石原孝二(本学准教授)
ゲスト:向谷地宣明氏(浦河べてるの家、ひだクリニック)

【ゲスト紹介】
向谷地宣明
北海道浦河町生まれ。生まれた頃から、両親が設立・運営に関わっている精神障害を経験した当事者たちの地域活動拠点「浦河べてるの家」で過ごす。2006年、国際基督教大学教養学部社会科学科卒業。大学卒業後、精神障害を経験した有志と株式会社エムシーメディアンを池袋に設立。池袋を中心にホームレス支援を行うNPO法人てのはし(代表:森川すいめい 精神科医)と出会い、路上生活状態の精神障害者の支援事業に参加。池袋+べてるで「べてぶくろ」が発足し、「共同住居ふぁみりあ」や「グループホームしずく」などをつくる。医療法人宙麦会ひだクリニックの職員としても活動、2009年に同法人理事に就任。べてるで生まれた「当事者研究」も行っている。現在は、群馬の華蔵寺クリニックや練馬の陽和病院にも行って定期的に当事者研究のプログラムを行っている。

【講義内容】
統合失調症などを経験した当事者と共に、私たちが普段行っている当事者研究を紹介したいと思います。当事者研究とは、症状や生活や人間関係などの様々な場面でおきてくる苦労や困難を「研究しよう!」を合い言葉にして自分の助け方や生活の工夫の仕方などを仲間や支援者と共に検討し、実際に活かしていく活動です。(向谷地宣明)

2012.12.21(金)“いい人”とはだれか?-映画『長江哀歌』の人と倫理(1)
講師:石井剛(本学准教授)

【講師紹介】
石井剛
東京大学准教授。UTCPメンバー。早稲田大学政治経済学部卒業、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。中国近代思想史・哲学専攻。主に中国語で書かれたテクストを読みながら、個と社会、個と時代、個と歴史の関係について考えている。訳著に『近代中国思想の生成』(汪暉著、岩波書店、2011年)。共著として、奥崎裕司編『明清はいかなる時代であったか-思想史論集-』(汲古書院、2006年12月)。

【講義内容】(第11回~第13回)
今日の中国映画を代表する賈樟柯(ジャ・ジャンクー)の『長江哀歌』(原題『三峡好人』を見ながら、現代文明と政治・経済・社会の大きな波の中に放り込まれた人々の「生」について考える。

2013.01.11(金)“いい人”とはだれか?-映画『長江哀歌』の人と倫理(2)
講師:石井剛(本学准教授)
2013.01.18(金)“いい人”とはだれか?-映画『長江哀歌』の人と倫理(3)
講師:石井剛(本学准教授)
2013.01.25(金)まとめ