「患者の選別」などは、長い間自然災害や事件と付き合ってきた結果生まれた新しい対策であるが、他にも未だに効率の悪い作業はたくさんあるであろう。そうした問題点はどのようなものであろうか?(1年・文Ⅰ)
【白濱先生のコメント】
トリアージとは「患者の選別」であることは間違いのないところですが、「患者の重傷度による治療の優先順位」と考えた方が分かりがよいと思います。わが国でトリアージが議論され始めたのは阪神淡路大震災以降で、まだまだ歴史は浅いです。防災訓練の際にトリアージの訓練をやりますが、実際のトリアージは「JR福知山線脱線事故」(2006年)の時に行われ、東京・秋葉原の7人殺傷事件の時もトリアージが行われました。
日本は平素から縦割り社会といわれて長いのですが、災害時のような緊急事態においてもあらゆる面で縦割り意識がまだまだ存在し、最も必要な「情報の共有化」や「諸機関の連携」等が欠落する傾向にあります。
【白濱龍興先生より】
アンケートに対する総評
「アジアの自然災害と人間の付き合い方」というテーマを自分の意志で選んで授業を受けに来た学生だけあって、災害そのものや災害医療に対する関心が大きいと思いました。
特にトリアージ、災害対処の3T、災害に対する備蓄、自衛隊の活動など、初めて聞く話が多かったせいか、関心を持って頂いて、私も大変勉強になりました。
彼らの一人一人の意見を今後の糧にしたいと思います。白紙が3人いましたが、それも大事な反応・意見だと思います。
このコースの授業の最中に、「ミャンマーのサイクローン」、「四川大地震」、「岩手・宮城内陸地震」という実際の巨大自然災害、生きた教材が発生し、これ以上時期を得たシリーズ講義はなかったのではないかと実感しました。
今回の授業について
私自身、防衛医大や自衛隊関連の学生以外の学生に「災害医療」や「自衛隊の活動」などの講義をしたのが初めてでありましたので、果たして聞いてくれるか否かということが不安でした。壇上から眺めていた限りでは、気持ちよさそうに目を閉じていたのはお一人で、実際にはもっといたのかも知れませんが全然気になりませんでした。私語もなく携帯を覗くものもなく、ジュースを飲むものもなく、さすが東大と思いました。
いろいろとご配慮有り難うございました。