2007年度夏学期 EALAI /ASNETテーマ講義 東グローバル・ヒストリーの挑戦

月曜5限(16:20-17:50) 教室:5号館524教室
担当教官:木畑洋一/水島司
東京大学 東アジア・リベラルアーツ・イニシアティブ

アンケート紹介

2007.07.09(月)秋田 茂 :アジア国際秩序とイギリス帝国、ヘゲモニー

世界システムというと西洋中心史観といったネガティヴなイメージが先行しがちですが、そこにポジティヴな相互補完関係を見出すというのが、新しい積極的な枠組みとして非常に印象的でした。また、例えばローマ帝国、モンゴル帝国、そしてオスマン帝国などといった過去の帝国についても、相互補完性のようなものが周辺地域との間であったのかという研究も(既にあるのかもしれませんが)興味深いところだと思いました。(1年・文Ⅰ)

高校まででも日露戦争周辺の日英関係や貿易構造の変化についてある程度学んできたが、それらはすべて”日本の”歴史を中心に据えたうえで、あくまでも副次的な情報として日本とイギリスの経済関係を見たものだった。その意味において今回の講義は、二国間の連関性を中央においた上で当時の状況を眺めるという新しい視点、つまり”グローバルな”視点を用いており、同じ歴史を以前学んだことがあるにもかかわらず新鮮であった。(1年・文Ⅰ)

イギリスの覇権維持はアジア間貿易の発展に依存していたということだが、自国の利益のためにアジアを利用したとみなせなくもないが、他国の上に乗っかっていることを不安定に思わなかったのだろうか。また、利益を得たいイギリスと近代化を急ぎたい日本を結びつける糸が綿糸というのは、しゃれではないが興味深い。近代のアジアとヨーロッパで垂直的分業と相互依存関係があったのも興味深い。(1年・文Ⅰ)

グローバル・ヒストリーは、世界が非常に狭くなりつつある現代においてのみならず、はるか以前から経済活動を通じて国と国とを緊密に結び付けていたことがよく理解できた。それぞれの国が思惑を持って外に向かおうと意図し、それが世界システムに合致し、その中に組み込まれていくときに、様々な事象が連動して歴史が動いていく様子はとても興味深い。イギリスがいち早く工業重視社会を脱し、金融社会へと移行していくのは、現在社会の象徴に思える。(2年・文Ⅲ)

英国のインド植民地支配、ロンドン・シティの経済的繁栄、そして日本の急速な工業化という世界の3つの場所で起こった出来事は、実はモノ・カネ・ヒトの移動によって密接に結びついており、ひとつの国際システムを構築しているというグローバリゼーションの具体的な事例を知ることができた。ところで、覇権国家の存在は、国際秩序におけるルールの形成を促すという面では不可欠な存在であるのかもしれないが、それは逆に価値観を他国に押し付けることにつながるという危険な側面もはらんでいると思った。また、現在の覇権国家であるアメリカの地位が将来失われたとき、アメリカに変わる覇権国家は登場しうるのか、あるいは覇権国家の存在しない新たな国際体制が生まれるのか関心を持った。
(1年・文Ⅲ)