2011年の東日本大震災ならびに原子力発電所の事故は、日本の政治・経済・社会に多大な影響を与えました。災害は偶発的に生じたものでしょう。しかし、近代を通じて形成されてきた人類の文化・思想の深い次元に関わる大きな時代の変化の波のなかで出現したという意味では、それはいつか訪れる必然であったのかもしれません。わたしたちは、震災後を生き、グローバルな環境の変革の中を生きていく人間と、それを取りまく社会の導き手となり得るような人間モデル・社会モデルについて、もういちど根本的なところから問いなおすべき岐路に立たされていると言っても過言ではないでしょう。
そのために、この授業では、これからの「現代思想」はどうあるべきかについて、わたしたちの身体を出発点としながら皆さんといっしょに考えたいと思います。毎回一つまたは一対の〈動詞〉を取り上げ、それを手がかりに文芸批評、社会批評、政治思想、実存思想、ジェンダー論、精神分析、技術論など人文学の多方面から、「新しい普遍」の構想に向けた見取り図を示していきます。それはこれまでそれぞれの分野に蓄積されてきた豊かな知を糧としたスリリングな思想の冒険になることでしょう。
なお、このテーマ講義は、UTCP/CPAG(東京大学共生のための国際哲学研究センター「グローバル化時代における現代思想―概念マップの再構築」研究プロジェクト)とEALAI(東京大学東アジア・リベラルアーツ・イニシアティブ)が共同運営するものです。
現代思想、グローバル化、普遍性、東アジア
12号館 1214教室