EALAI東京大学 東アジア・リベラルアーツ・イニシアティブ
日本語版
Counter:

オープンセッション

EALAIオープンセッション#7 「公」と「私」 を生きる 現代ベトナム社会と女性

第7回EALAIオープンセッションを開催しました。
当日は10名以上の参加者があり、ベトナムを出発点とした東アジアのジェンダー関係、とりわけ官製の組織や制度をうまく利用しながら生きる女性の姿について、活発な議論が行われました。

Kato%26ITO_1.jpg

Audiences_1.jpg

【 日時 】2013年10月21日(月) 午後2時50分~4時20分
【 場所 】東京大学駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム3
【趣旨】 
近代化の経験は女性たちに何をもたらしたのか。今日、世界のいたるところで、近代化が引き起こす経済成長や民主化が、女性の置かれた立場にポジティブな変化をもたらさないという状況が明らかになっている。その一方で、女性たちは近代的な規範と伝統的な規範を織り合わせながら、「公」と「私」の領域のなかでうまく生きている。

本オープンセッションでは、移行経済期を迎え大きく変容しつつあるベトナム社会に生きる女性に焦点を当て、公的な相互扶助組織である村落の婦人会と、女子学生の大学進学を取り巻く家族の適応戦略という二つの視点から報告を行う。そのうえで、自分たちが置かれた社会やさまざまな規範にうまく対応し、ときに巻き込まれながら、あるいは別のオルタナティブな場を見出しながら暮らす女性たちの主体性に着目し、今日の東アジア社会で暮らす女性たちの役割や女性性とはなにかについて議論してみたい。

【報告者】
加藤敦典(東京大学EALAI・特任講師)
「集団」をつくりあげる:ベトナムの婦人会の公共性をめぐるむらの女性の話しあい

伊藤未帆(東京大学EALAI・特任講師)
「学歴社会」化するベトナムと家族の女子教育戦略

【要旨】
1. 加藤敦典
ドイモイ以降、ベトナムの女性たちが「みんなのことがら」(cai chung)とかかわる場のとして、婦人会が重要な役割を果たしてきた。しかし、婦人会は官製の大衆団体であり、そのなかで、会員の女性たちは国家の規範と、生活の必要に依拠した規範のあいだで揺れてきた。
この報告では、ベトナムの村落での文化人類学的調査に基づき、婦人会の役割をめぐる会員たちの話し合いの様子を中心に議論を進める。具体的には、ある妊婦の世帯の稲刈りを会員たちが手伝うべきかをめぐり、婦人会の活動として支援すべきだとの意見と、この世帯が国家の推奨する「文化的家族」ではないことを理由に国家の公認団体である婦人会が援助すべきではないとする意見が対立した。
この事例は、ベトナムの女性たちが、国家がつくりだす公共の枠組みに依拠して連帯を生み出すことの可能性と困難を示すものである。また、その際、社会主義的な概念である「集団」概念がベトナムの公共圏の再編成のカギになりうることを指摘する。

2. 伊藤未帆
この25年間でベトナムの高等教育を取り巻く環境は大きく変化した。社会主義経済建設期には一握りの国家エリート予備軍を輩出するためのものであった大学は、1990年代初頭の高等教育改革を経て広く大衆に向けて開放され、今日では総人口のおよそ15%が大学に進学するまでになった。本報告では、ドイモイ期における高等教育の量的拡大という契機を、女子の大学進学とそれをめぐる家族の教育戦略の変化という視点から明らかにする。社会主義近代的なジェンダー平等規範、市場主義経済の導入とともに「復活」した伝統的な家族規範にうまく対応しながら(あるいは左右されながらも)、リベラルな個人の上昇志向を通してより良い暮らしを求めて生きようとする、女性たちの主体的なあり方について議論してみたい。
 

【コメンテーター】瀬地山角(東京大学国際社会科学専攻・教授)
【主催】EALAI
【使用言語】日本語

ポスターをダウンロード

【問い合わせ先】 東京大学 EALAI
e-mail:contact◎ealai.c.u-tokyo.ac.jp(◎はアットマークに置き換えて下さい)