EALAI東京大学 東アジア・リベラルアーツ・イニシアティブ
日本語版
Counter:

南京大学集中講義

「〈表象=上演〉史としてのオペラ」/ 長木 誠司(音楽学・現代音楽)


この授業では、18世紀後半から20世紀までのオペラを、表象文化論的な観点から分析する。その際、〈作品〉そのものの音楽的な特性、物語構造(オペラ・ドラマトゥルギー)、演劇性(シアトリカリティ)、空間・時間構造の分析と、それらが実際の舞台でどのように実現されてきたかという歴史、すなわち作品史と上演史を平行させながら、今日のオペラ上演の問題として議論する。両者に通底しているのは、オペラの解体と再生、セクシャリティの解釈と再解釈、上演(表象)の不可能性と可能性といった問題系である。

(*は参考文献)
1)〈異〉なるものの同化と変容:モーツァルト《後宮からの逃走》
*Peter Kivy, Osmin's Rage. Philosophical Reflections on Opera, Drama, and Text. (Princeton University Press, 1988)

2)狂い、死すべき女性たち:ドニゼッティ《ランメルムーアのルチア》
*Catherine Clement, Opera: the Undoing of Women. (University of Minnesota Press, 1989)

3)団結する男たち:ヴァーグナー《ローエングリン》
*Celia Applegate & Pamela Potter, Music and German National Identity. (University of Chicago Press, 2002)

4)欲望の代理としての東洋:プッチーニ《蝶々夫人》《トゥーランドット》
*Jonathan Wisenthal (ed.), A Vision of the Orient. Texts, Intertexts and Contexts of Madame Butterfly. (University of Toronto Press, 2006), Kii-Ming Lo, Turandot auf der Opernbühne. (Peter Lang, 1996)

5)オペラの内部と外部:R.シュトラウス《ナクソス島のアリアドネ》
*Charles Osborne, The Complete Operas of Richard Strauss. (Da Capo, 1988)

6)物語の解体/解体の物語:B.A.ツィンマーマン《兵士たち》
*Dörte Schmidt, Lenz im zeitgenössischen Musiktheater : Literaturoper als kompositorisches Projekt bei Bernd Alois Zimmermann, Friedrich Goldmann, Wolfgang Rihm und Michèle Reverdy. (Metzler, 1993)

その他の基本文献
*Donald Jay Grout & Claude V. Palisca, A History of Western Music. 4th ed. (J.M. Dent, 1988),ドナルド・J.グラウト/クロード・V.パリスカ(戸口幸策ほか訳)『新西洋音楽史 上・中・下』(音楽之友社、1998-2001)
*Donald Jay Grout & Hermine Weigel Williams, A Short History of Opera. 4th ed. (Columbia University Press, 2003), D.J.グラウト(服部幸三訳)『オペラ史 上・下』(音楽之友社、1957-1958)
*三光長治『エルザの夢改装版 新しいワーグナー像を求めて』(法政大学出版局、1996)
*長木誠司『前衛音楽の漂流者たち――もう一つの音楽的近代』(筑摩書房、1993)