EALAI東京大学 東アジア・リベラルアーツ・イニシアティブ
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「第14回東アジア四大学フォーラム・北京会議」 齋藤希史(『駒場2012』)

 「東アジア四大学フォーラム」(BESETOHA)は、日本、中国、韓国、ベトナムの東アジア4 カ国における代表的な総合大学である東京大学、北京大学、ソウル大学校、ベトナム国家大学ハノイ校が、特定のテーマや個別の機関において行っている教育・研究交流を超え、四大学としての相互交流を行うことで、東アジアにおける教育・研究の共通のプラットフォームの構築と維持を目指すために組織されたもので、1999 年以来、年1 回、4 大学持ち回りで開催されている。フォーラムでは、個々の大学が直面するさまざまな経験と問題意識を共有しながら、それぞれの大学の組織的な交流基盤を構築するとともに、4 つの大学が連携・協力して、各国の歴史的・社会的、かつ文化的な相違を踏まえつつ、21 世紀の東アジアにおける大学教育や研究を連携して推進するための体制や具体的な方法について議論を行ってきた。
 第4 ラウンドの2 回目にあたる第14 回会議は、12 月 13 日、14 日に、"Impact of Science & Technology on Human Conditions & Development"を全体テーマとして、北京大学で開催され、羽田正副学長・国際本部長のほか、本研究科からは、長谷川壽一大学院総合文化研究科長、古田元夫総合図書館長、石井剛准教授、岩月純一准教授、齋藤希史教授、清水剛准教授、高橋英海准教授、月脚達彦教授が参加し、伊藤博教務補佐が通訳等にあたった。
 13 日は北京大学による歓迎レセプションが開かれ、すでに旧知の間柄となった各大学の教員同士がなごやかに歓談する姿が見られた。14 日午前には、開会式に引き続き、4 大学の総長による基調講演が行われ(本学は羽田副学長による講演)、さらに午後には、“Creation of University Data Exchange Scheme Among Asian Leading Universities”、“The Integration of Scientific Advancement in General Education”、“Classics in Liberal Arts Education”の三つのワークショップが開かれた。
 基調講演においては、人類の歴史において科学技術が果たしてきた意義はもちろんのこと、大学という学術の府がこれまで果たしてきた、そして今後果たしていく役割についても、各大学の視点から総括と提言があった。
 第1 ワークショップ“Creation of University Data Exchange Scheme Among Asian Leading Universities”では、本学大学総合教育研究センターの小林雅之教授による報告が行われ、今後の大学改革・連携において重要度の増しつつある基礎データの交換スキームについて、活発な議論が行われた。
 第2 ワークショップ“The Integration of Scientific Advancement in General Education”では、長谷川研究科長による報告が行われ、駒場における先端研究と教養教育との連携が大きな注目を集めた。
 第3 ワークショップ“Classics in Liberal Arts Education”では、齋藤教授による報告が行われ、古典教育を活性化する方法について、各国からさまざまな提言がなされ、とくに、共通の古典教科書の策定や、4 大学の学生が一同に会して古典を読むワークショップの開催などの実現可能性を探ることとなった。
 全体を通じて、4 大学としての連携が大きな意味をもつことが再確認されたフォーラムであった。近年、東アジアにおいても2 カ国間の交流はさかんに行われ、成果を上げることも比較的容易になってきたが、4 カ国共同で事業を行うのには、さまざまな困難がともなう。今回のフォーラムは、それを乗り越えるためのいくつかの試みがなされ、大学間の教育データ交換スキーム、科学教育の方法の相互参照、古典教育の交流方法など、共通のプラットフォームを構築しやすい分野について、議論の進展があったことは喜ばしい。
 なお、今回の北京会議では、開催校の都合によって、3 つのワークショップはすべて英語を使用することとなったが、基調講演は各国語で行われ、また、“The Integration of Scientific Advancement in General Education”では、中国語も併用された。通訳などのコスト面から言えば、すべてを英語で統一するのが有利であることは否めないが、本フォーラムが、東アジア各国の歴史と文化を尊重する立場から開催されるものである限り、運用言語においても、4 カ国語の使用を原則とすべきであるという本学の姿勢に変わりはないことを、特に記しておきたい。